前編のつづきです。
3.考察
3.1 観客について
50,000人以上が参戦した(主催者発表)という今回のフェス。
観客席を見渡してみると幅広い世代の姿が見えた。とりわけ家族連れで来ている人が大多数のようだった。この手の団体でありがちな高齢者に偏った構成はみられない。
また、ブレザーの男女もかなり見かけた。「幸福の科学学園」の生徒がクラス単位で来ていたようだ。
ベージュのベストを着た栃木の子たちだけでなく、水色の制服の関西校の生徒も先生に引率されて動いていた。総裁の話聞くのが修学旅行なのかな?
もうひとつ、車椅子や白杖(視覚障害者用の白い杖)を持った方も目立った。
かなり多数おられたと思う。「ヘレン席」という聴覚障害者向けの席もあった(ヘレン→ヘレン・ケラー)。
演説の字幕を映した大画面や、その横に手話通訳者の姿が見えた。
※ただ、この「印象」は注意すべきではある。単純に車いすや白杖は目立つこと、そして「宗教は弱者がすがりつくもの」という先入観があるからだ。「宗教は弱者のもの」は一面では正しい。特に新しく生まれた宗教は往々にして「社会的弱者」を保護し、布教する。戦後の創価学会[i]が有名な例だろう。
だが、こうした印象論に誘導されて「幸福の科学の信者は社会的弱者が多い」と結論付けるのは正確ではない。幸福の科学の教義は、新自由主義や機会の平等の徹底(結果の平等は否定)といった「強者の思想」である。教団が難関大学進学を奨励し、ビジネスや各界での成功した人を前面に押し出し、幸福実現党は新自由主義に基づいた格差を肯定しているのはその最たる例であろう。そう考えると、障害者をけっこう見かけたことは少し意外な気もした。
4.2 演説について
総裁先生[ii]、演説かなりうまい。
・早口でない
・よく区切る。「ため」を多用するので適度な緊迫感を保てる
・緩急をつけて喋る
・演説内容は意味不……壮大な話なのに、話す言葉は平易
・数字や人名といったディティールを多用する(抽象的にならず食いつきやすい)
・よく分からないところで急に語気を強める
↑のような、話し方が聞きやすく人を惹き付ける話し方を備えている。
特に語気の強め方は特徴的。
「現代の科学ではぁ!,,,証明できませぇん!,,,しかーし!,,,三億年前にぃ!,,,恐竜が闊歩していた時代にぃ!,,,私たちの魂はぁ!生まれたのです!!,,,あぁるものはぁぁぁ!!!(←急に叫ぶ)霊体としてぇ!この地球に降臨しましたぁ!別の者たちはぁ!他の宇宙からぁ!(以下略)」
……と、そこで叫ぶのかよってとこで叫ぶ。だれそうな部分では漫然としゃべるのではなくアクセントにメリハリを付ける。演説はかなりうまいしカリスマ性がある。何より、終盤に向かって徐々に語気のボルテージを上げていって、クライマックスで
「全人類よ!!!私の言葉をきけぇぇぇっ!!!」
と、東京ドーム中に響き渡った瞬間にはシビれた。
憶測だが、これはヒトラーの演説に通じるものがあると思う。
総統の演説は"口調"とか”ため所”とか”興奮”の仕方とかが本当に上手い[iii]。
当時のドイツ国民が感化されるのも無理はない。
ただ、総裁先生のしゃべり方ってなんとなく「怒ってる」ふうに聞こえる。
それも…なんというか、小学校の先生が「なんで怒ってるか分かる!?」って怒鳴られたときの気分を感じる。理不尽な怒られ方というか。
「確かにぃ!,,,いろんな国が愛国心を持っています。それは大事でしょう!それは認めましょう!
しかしぃぃぃ!!!それが全てではなーーーい!!!」 ※怒りポイント
自分と関係ないのに自分が起こられているかのように錯覚した。
そして、大川総裁はハスキーボイスである。布施明かよってレベルだった。
ただ、このハスキーボイスにカリスマ性が宿っている……かもしれない。
『倍音』という本によれば、人間は雑音を含んだ音に親しみを感じるらしい。演歌でいう「こぶし」やヴォーカルのビブラートなどがそれだ。
政治家でいえば、田中角栄や小泉純一郎の声にはこの雑音が入っていたといわれる。彼らの演説は良くも悪くもカリスマ性があった。総裁先生の声を政治家に当てはめると、女性だが田中真紀子に似てる気がする。彼の声質も田中親子や小泉の系統に近いと思う。
大川総裁のカリスマ性は池田先生のカリスマ性とは毛色が違う気がする。
この点は上手く説明できないけど……。
4.3 雑感
▼
「私は今!100万人が死んだ時に備えて!100万のの魂を霊界が回収できるよう必死に仕事しています!」
私(霊界キャパ意外と狭いんだな…)(残業代つくのかな…)
▼このフェスの内容を3行でまとめると
・神の言葉を聞け
・神=私
・私の言葉を聞け ∴Q.E.D.
▼人類の魂を作ったアルファ神とエルカンターレの違いがよく分からなかった。
・一神教
・自由や民主主義を肯定
・新保守主義
・反共産主義
・神に基づいた国家を志向
幸福の科学の用語は仏教準拠(出家とか)だけど、エルカンターレが最高神という時点でほぼ一神教的。唯一違う点は輪廻転生を説いてるところくらい。福音派メガチャーチのライヴ感もそっくり[iv]。
「最も注目すべきは、収入の高さではないだろうか。メガチャーチ信者の26%が、$100,000(約930万円)以上。全体平均は15%。全体平均には既にリタイアしている高齢者が多く含まれているとはいえ、大学生や卒業したばかりの若年層を多く抱えるメガチャーチ信者の平均収入は高いように感じられる。これも一つのマーケティング成果なのだろう。」[v]
この点もそう。幸福の科学は「現世」での「成功」に重きを置く。幸福実現党の候補者はみんな高学歴。なによりエルカンターレ自身、東大法学部を卒業して総合商社に入り、海外駐在を経て「悟っ」た経歴の持ち主だし。
▼幸福の科学に入会すれば、過去の罪が軽くなり病気が治るらしい(パンフレットに書いてあった)。この徹底的な「現世利益」重視は創価学会の手法に通じる。
この点こそが、一見うさんく……コンテンツ性が似通っているオウム真理教と異なる点だろう。
……そういえば私、ずっと昔に創価学会の座談会を見学させてもらったことがあった。
そのときリーダー役の男性が私にこう語ったのが印象的だった。
「現世利益って知ってる?
普通の宗教は死んだ後の幸福しか祈らない。
でも、学会は現世での成功……つまり、”勝利”を祈る。
僕たちは人生の勝利のためにいきているんだ」
▼総裁マヂ神……。
▼“父親が唯一神”の子ども、どういう感情なんだろう(長男と次男をみて)
▼幸福の科学学園の区別
ベージュのベストとブレザー=那須校。かわいい。
水色ベージュのベストとブレザー=関西校。かわいい。
▼そういえば幸福の科学の映画を観にいくと信者に囲まれるって聞いたことあったけど
今回はそんなこと全くなかった。まあ規模も段違いだし誰が入信してないかなんて見分けつかないだろうしね。
▼今回のフェス、決まったチケット代は設定されていない「植福(=寄附)制」で、
信者→10,000円(目安)
非信者→5,000円(目安)
となっていた……はずが、
なぜか寄附を求めるブースもなく、ただパンフレットと一緒に植福袋(封筒)を渡されただけだった。
終演後に払うのかな?と思ったら素通りでドームを出ることができ、結局そのまま帰ってしまった。
……こうやってネット上で布教活動しているので、この件は大目に見てください。
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長々と失礼しましたm(_ _)m
お付き合いくださりありがとうございました!
[参考]
8/2「大川隆法 IN 東京ドーム」速報レポート!―特別大講演会「人類の選択」―The Choice of Humankind― | 大川隆法 公式サイト
※番外編
当日の東京ドームシティホール、中島健人くんがいた
東京ドームの向かい側に立つ都立工芸高校。
モニュメントが異様かっこいい。
飯田橋駅まで歩いたら見つけた。
映画もやってる↓
かいたひと↓
[i] 都市の貧困層――農村から出てきた、コミュニティから孤立した世帯に向けて宗教というコミュニティを提供し、勢力を拡大した。強引な布教活動の「折伏」や日本最大の新宗教団体というイメージはこのころの産物である。
[ii] みんなこの二重敬称で呼んでいた。