この記事は「かつ丼とカレンダー2020 Advent Calendar」13日目の記事です。
正直、この1年でかつ丼について考えることはほとんどなかった。*1
だが、一つだけ引っかかることがある。
それは、なぜあの漫画にかつ丼が登場しないのかについてだ。
世はまさに大鬼滅時代
観たし読んだ。
『鬼滅の刃』、ここまで社会現象になると観ないことで逆張りをしたくなるが、原作の漫画はジャンプの王道の展開でとてもハラハラしたし、アニメも色鮮やかで引き込まれた。
とても面白かったが、一つだけ引っかかることがある。
物語の序盤、主人公・竈門炭治郎と妹・禰豆子の2人は東京・浅草のうどん屋台に入り、炭治郎は山掛けうどんを注文する。
しかし、アニメの7話である事件が起き、炭治郎は屋台から走り出し、その拍子にうどんの鉢を落とす。
そして帰ってくるとうどん屋台の主人・豊さんは大激怒。
炭治郎は平謝りするが、豊さんは鬼化して竹筒をはめた禰豆子にまで難癖を付け、炭治郎はなぜか人間の食物を食べられない禰豆子の分も含めてうどんを2杯分食べる。
劇中では緊迫した展開から一転したコミカルな場面ではあるが、やはり腑に落ちない点がある。
この場面以外にも、『鬼滅の刃』には「うどん」が登場するのにかつ丼は出てこない。
なぜうどんなのか?
なぜかつ丼ではダメなのか?
そもそも大正時代にかつ丼はほどんどないから
身も蓋もないが、そもそも鬼滅の刃の時代、浅草にかつ丼は存在しない可能性が高い。
上の記事によると、かつ丼の発祥は大きく分けて
……があるという。
一方、鬼滅の時代設定は大正時代。正確には大正初期とされる。
1の早稲田説であれば、大正中期以降であれば間に合わず、最も早い大正2年でも生まれたばかり。SNSで一地域のトレンドがすぐに波及する現代とは違い、当時の流行の中心地である浅草にかつ丼屋がすぐにできるとは考えづらい。
2の甲府説にしても、甲府が発祥の地だったとしてもそこから全国に広まった可能性はあまり高くなく、ローカルフードの範疇ではなかったかと思われる。
つまり、時代考証の都合上、かつ丼が出てくることはほぼありえないのだ。
だが、かつ丼でなくてもうどんである必要はないのではないか。
そもそもここがうどん文化の強い大阪や西日本ならともかく、かつて江戸と呼ばれた東京はそば文化のはずだ。
うどんである必然性はあるのだろうか?
あの映画のオマージュだから
SF映画『ブレードランナー』で、主人公たちが屋台に入り、
「四つくれ」
「二つで充分ですよ」
「いや四つだ。二と二で四つだ」
「二つで充分ですよ!」
と屋台の主人とやり合う場面がある。その後、主人公はこう付け加える。
「うどんもくれ」
SF映画と漫画・TVアニメでジャンルは違うが、うどんはこの場面をオマージュではないだろうか。
しかも、炭治郎が食べたうどんは二つ。『ブレードランナーの』屋台の主人が出した数と一緒だ。
うどんで「竈門炭治郎」の人となりが分かるから
だが、何より大事なことがある。
それは「うどん」という料理が持つ意味だ。
今でも駅前に「立ち食いそば・うどん」があるように、うどんは外食では今も昔も安さを象徴している。
あっさりした味わいで1杯の値段も安い。
戦いの最中で、炭治郎たちは決して裕福ではないことは想像できる。そんな彼らが頼む素朴な一杯。そして、普通の食事を食べることのできない妹の分も兄が食べる。
想像してほしい。もしこの場面がラーメン二郎だったら?
確かにかつ丼はおいしいし、現代ではチェーン店もあり安い値段で食べることができる。
だが、人々の暮らしが決して豊かではない大正時代、豚肉を使ったかつ丼はまだ珍しかっただろうし、安いものでもない。
油っこい食事ではなく、あっさりして安いうどんを食べる場面。
こここそが、炭治郎のやさしさ、兄妹の絆を端的に表現している。
いかがでしたか
ほとんどネットで調べた知識だし、そもそも原作者もアニメの制作陣も深い意味があってうどんにしたわけではないと思うので、適当に読んでいただければ幸いです。後半はやっつけだし。
お詫びに今年食べたかつ丼の写真を上げます。
*1:女子だし。