以前、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に行ってきました。
そのときの旅行記を何回かに分けて連載していきます。
平壌行きの飛行機。ロシア【ウクライナ】製。コックピットのとこ窓開くんだね……。
▼共和国渡航について
※「共和国」は北朝鮮のことです。
現地の人々は自国のことを北朝鮮とは呼ばず、「朝鮮」「共和国」などと呼びます。
以下、本記事でも原則として「共和国」と表記します。
▽いつ、どのくらい行ったの
→数年前の秋。
共和国には3泊4日間滞在。経由した中国を含めて総行程は7日間。
▽入国/出国経路
平壌→《鉄道》→丹東(国境の街)→《寝台列車》→北京→《飛行機》→日本
丹東市は朝中(中朝)国境の西端に位置します。
平壌発中国行きの国際列車。中央部の紋章は共和国の国章です。
▽廻ったところ
首都・平壌市内のほか、南部の都市・開城(ケソン)、南朝鮮(韓国)との国境地帯・板門店など。
特にここに行きたい!というリクエストはしていなかった(というかどこに行けばいいかわからない)ので、外国人向けの“一般的な観光コース”を廻りました。
似たようなルートを廻った人の旅行記は探せばかなり出てくるはず。
何かと話題の国境地帯・板門店にも立ち入れました。向かい側に行けば韓国。
いかにも共和国らしいところでは、
・祖国解放戦争*2博物館
・金日成主席の生家……などを見学。
インスタ映えさせてみた。
共和国らしくない、というか想像もつかないところでは、
・世界遺産の古墳
・中学校の授業参観と中学生のライブ……などもありました。
アイドル活動。
もちろん食事は悲惨……なんてことは一切無く、参鶏湯やビビンバ、冷麺など豪華かつたいへん美味しいご飯をいただきました。
なんというか、こういう共和国経済の記事を読むと申し訳なくなってくる。
▽だれといったの
→ひとりです(声かけた全員から断られた)。
こういうのが一日三食付きました。
※免責事項……写真中にビールが写っていますが、私は17歳JKです。弊ブログは各種法令及びコンプライアンスを遵守しております。ごあんしんください。
▼想定問答集
「共和国に行った」という旨を話すと必ずと言っていいほど聞かれる質問をまとめました。
そもそも日本人が行けるの?
→カネさえ積めば、ほとんどの日本人は誰でも行けます。
例外なのが警察・自衛隊関係者、公務員、報道機関、そして在日韓国人など韓国側の国籍所持者。
ただ、公務員でも国家公務員はさすがにNGだけど「市役所の職員ならまあまあOK」(現地ガイド談)らしい。基準が謎。
そもそもなんで観光客なんか呼ぶの?あんなヤバい国なのに……。
→少しでも外貨ほしいから。あとはプロパガンダ。
経済制裁で満足に貿易できない共和国にとって、ユーロや人民元、日本円を使ってくれる外国人は大切な“お客様”。
それに、世界中のメディアからさんざん危険視されている共和国にあえて来てくれるからには、われわれの“真の姿”知ってほしい、という意図も見られます。つまり、テレビで見るような独裁国家で不自由でモノが無い国……じゃない!ということに”気づいて”ほしい、ということ。
なので、私たち観光客は5つ星相当の高級ホテルに泊まり、三食豪華な食事を食べ、停電などに悩まされることなく、VIPのような待遇で数日間を過ごします。
そういうわけで、当たり前ではあるけれども向こうで「目にする」ものは全てが本物ではない。観光客側も相当なリテラシーが問われる。
リテラシーっていうとかっこいい響きだけど、ようは突っ込みどころを探せって話です。
※ドルや韓国ウォンなど敵国の通貨は使えません。その代わりにユーロと人民元、あと千円単位でのみ日本円が使用可能(経済制裁の影響?のため硬貨で円は使えない)。現地のウォンは使えない。外国人が現地通貨を持つと逃げても生活できちゃうから。
※でも公共施設なのに真昼は電気を点けないなど、明らかに節電を強いられてるんだろうなという場面はさりげなくありました。あと水道はよく止まっていた。
どうやって行くの?
→基本的には中国経由。(ほぼ無理だけど)稀にロシア経由。
南朝鮮経由で渡ると撃たれます。
昔はあの有名な万景峰号も新潟に来ていたし、30年近く前にはなんと平壌行きの直行便(チャーター)が名古屋空港に降り立っていたという。今となっては信じられないが……。
※共和国の人々は韓国のことを南朝鮮と呼びます。逆に韓国人は北の韓国領=北韓(ほっかん/북한プッカン)と呼ぶ。
申し込み方は
・日本の在日朝鮮人系の旅行会社or中国の旅行会社に連絡する
・事前(だいたい2ヶ月前)に氏名・年齢・職業などの個人情報を送り、ビザを申請する
これだけ。共和国には意外なほど簡単に行けます。
北朝鮮 旅行・ツアー(中国発) | Whenever大連ローカル
↑のリンクをご参照ください。下の方の会社では「北朝鮮でポケGOしよう!」「乗り鉄ツアー」などの企画があります。
滞在中、自由はあるの?
→あります。なぜなら監視されてるから。
……矛盾した言い方ですが、ようは「勝手な行動しなければだいたいOK」ということです。
私は一人で旅行しましたが、1人に対して
・通訳兼ガイド(兼監視役)2人
・専属ドライバー1人
・移動用ワゴン車1台
という大名待遇。でもこれは裏返せばここまでするからには勝手な行動はさせないぞ、という強い圧力を感じます。ガイドが2人なのも、1人だけだと目を離してしまうから、あるいは買収されてしまうから相互に監視しあう必要がある、という噂です。
旅行もすべて「ツアー」に申し込む形式で、完全に自由な旅行は不可能です。
ただ、ガイドさんは日本語も(一度も日本に行ったことがないにもかかわらず)とても上手で、なんでも答えてくれます。
“訓練”された北朝鮮人なので政治的な質問もOKでした。私は逆に朴槿恵(前大統領)についてどう思う?と向こうから聞かれました。
”訓練されてない”一般の人民には話しかけるな、と言われましたが……(ここはちょっと考えるところがある)。
写真も基本的には撮影OKで制約は少なかったです。どのみち都合の悪いとこには行かないから、きれいなところだけを見せて宣伝してほしいということでしょう。
NGなのは
・軍事施設と軍人(わかる)
・パレードなどのイベントの練習の写真(まあ邪魔しちゃいけないよね)
・工事現場(全然わからん)
・金日成主席・金正日将軍・金正恩委員長の銅像や写真をブレて写すこと(???)
肖像画とか撮ってOKなのは意外でしたが、「写真の中央において、ピンボケなどせずに必要がある」と指導を受けました。ちゃんと撮れたか主観あるのでは。
あと、旅行中に一回NGなところを撮ってしまいました(わざとじゃない)。
ガイドさんはしっかり見ており、即座に「消してくださいね^^」と言われました。
費用はいくら?
→高い。南朝鮮に3~4回は行けちゃう値段です。
大連ローカルに載っている旅行社だと、最安値(10人以上・往復列車・3泊4日)で91,000円。実際は個人旅行だったり飛行機で入国したりするのでもっと値段はつり上がって、15万円以上は確実にかかります。なんていったって人件費と食費がかかってるからね。
しかもこのツアーは中国発着なので、日本~中国の移動は別途自分で手配する必要がある。
私の場合は
・共和国ツアー……約16万円
・中国までの航空券……約5万円
・共和国での諸費用(おみやげなど)……2万円
・中国での宿泊費・移動代など……2万円
というわけで計25万円はかかりました。
でも、これだけの金に見合う対価は十分にあった、お金以上の経験は得られたと思います。
日本からは何人くらい行くの?
年間150人くらい(ガイド談=旅行当時)。
リピーターが非常に多く、旅行中に同じ日本人と何人か出会いましたが、彼らのほとんどは2~3回目でした。
あと「北朝鮮 旅行」で検索すると無数の、そして有象無象の旅行記が出てきます。インターネットの人間は共和国に行きがちです。
私もそんなに珍しくないと思うんだけどなあ。
※最後の注意まで読んでね。
新婚旅行 at 朝鮮民主主義人民共和国 - エターナル総書記
私が共和国旅行を決意したきっかけとなった記事。
一番危なかったのは?
出国間際に3時間かけて荷物検査が行われたことかなー。
日本に戻れるか不安でしたが無事に出国できました。
税関のおじさんは携帯の中身も見せろと要求し、写真を何枚か勝手に消していきました。
何で行こうと思ったの?
誰も見ないところを自分が見たかったから。
▼注意事項
※2016 年2月12日付で北朝鮮への《渡航自粛》要請が外務省より発令されました。
日朝間に正式な国交は結ばれておらず、大使館などの日本の政府機関もないため、渡航者が北朝鮮で事 件・事故・トラブルに遭遇しても、日本政府による通常の支援は期待できません。
直近では米国の大学生が拘束された後に死亡する事案も発生しました。
共和国への旅行を検討された方は、こうしたリスクと日本政府の勧告にご留意ください。
▼最後に
……とまあ書きましたが、なにより「自分が出したカネがミサイルになる」「ここでカネを落としても一般の人民には行きわたらないだろう」という点に倫理的な葛藤があります。拉致問題も全く解決していない。
なので、積極的にみんなも行って!とは言わないし言えません。
ただ、行くな!とも言わないでおきたい。
「ここで得た知見で共和国を平和にしてやる」
という意気込みで潜入すれば、得るものは確実にあります。あなたの今後の人生の大きな糧となるでしょう。
これから何回かに分けて旅行記を載せていきます。
読んでいただいて改めて考えてくれれば、とてもうれしいです。
生きて帰ってきてね。
★上にも書いたとおり、北朝鮮旅行の思い出を何回かに分けて連載していきます。
気長にお待ちください。過度な期待はお控えください~。
この記事は “しむどん Advent Calendar 2017” 12/7の投稿でした。
なお、しむどんこと嶋田健志さんと北朝鮮は一切関係ありません。
かいたひと:女學生 - mstdn.jp
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