この記事は Mastodon 2 Advent Calendar 2017 の12/6の記事です。
前編の続きです。
(あらすじ)
mstdn.jp(jp鯖)は毎日が「文化祭の前日」のような高揚感に包まれていました。
では、この高揚感はいったい何者なのか?
逆に、ふだんのコミュニケーションにそのような高揚感がない理由として「社会的属性」が足かせとなっている――「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が気になってしまう、ということを考えてみました。
そして、この社会的属性という足かせが外れた空間として大災害後のフラットなコミュニティ、「災害ユートピア」についても触れました。
では、jp鯖はどういうコミュニケーションの場だったのか?
改めて考えていきましょう。
▼一体感、連帯感、距離感 ――問いへの「答え」
話をjp鯖に戻しましょう。
始まったころのjp鯖はまさに「高揚感」に包まれ、ユーザー同士の連帯感がありました。
災害後に助け合うような「高いモラル」は到底有していない(いきなり膣とか言ってくるの初心者には厳しい。みんな反省してほしい)ので災害ユートピアそのものとは全く言えませんが……。
とはいえ、jp鯖は災害で生まれたわけではありませんが、ユーザー間で(一応の)共通認識がありました。
「Twitterからの移民」と「鳥は燃やせ」です。
jp鯖民の多くはTwitterから移ってきました。彼らはTwitterの不自由な現状――無言フォロー厳禁、「FF外から失礼します」という謎挨拶――に息苦しさを感じて移住してきました。こうして「反Twitter」という共通の出来事/思いを共有し、いつしか「鳥*1は燃やせ」が合言葉のようにタイムラインで飛び交うようになりました。
もちろん私みたいにTwitterを経由してない人、鳥に全く敵意を抱いてない人も少なくなかったはずです。むしろこっちがサイレントマジョリティーじゃないかな……。それでもみんなが半分面白がって便乗していくうちに「鳥は燃やせ=反Twitter」が共通見解のようになり、 あんな堅苦しい交流はやめようもっと自由にやろう! という点で一致していきました。
この一体感が加速度的に増していったのは、「ローカルタイムライン(LTL)」「連合タイムライン(FTL)」の存在によるところが大きかった。
サーバーの全登録者の投稿が流れてくるLTLや他のサーバーからの投稿も一緒に流れるFTLはTwitterにはない、分散型ならではの機能です。*2
Twitterではリア友つながり、共通の趣味つながり……といった「クラスタ」単位でフォローを形成するのが前提で、なかなかクラスタの外の人々を見ることは難しい。でも、マストドンならサーバー(インスタンス)単位で、さらにインスタンスを超えていろんな人を見つけることができる。
こうして一体感はインスタンス全体に広まり、趣味や嗜好、年代を超えた大きなコミュニティを形成するに至りました*3。
もうひとつ、jp鯖の特徴として、ほどよい匿名性とほどよい個性のバランスがありました。
2ちゃんねる*4のように全くの匿名でもなく、かといって現状のTwitterみたくリア友の存在を気にする必要もない。フョェスブッヨ*5?なにそれ???
「ほどよい距離感」を保てたこと、独特の悪ノリがありながらも個人の核心には踏み込まない最低限のルールを両立できたのかもしれません。
……とはいえ、ここでいう一体感やあいまいな距離感は、内輪では気持ちよくても新参者からすれば謎の部族の習俗に他なりません。集団心理からいじめにだって発展しかねない。というか何度かした。ここははっきり言ってよくない面だと思います。
美しいコミュニケーションの掟も、あまりこだわりすぎると野蛮な風習になってしまいます。
この辺のバランスは難しいですね。
最後に「問い」の答えをなんとかまとめてみます。
Twitterに対する感情が一体感を生み、LTLによって「jp鯖」という枠組みが生まれ、適度な距離感でわいわいできた。
これが「文化祭の前日」の正体(の一つの解釈)。
私も一緒にわいわいしたい。一緒に「文化祭の前日」の空気を共有したい。
そう思える空間がjp鯖でした。
……うーん、答えになってないね……ごめん……。
http://www.mucha.jp/slavepopej19.html
▼文化祭が訪れないまま、僕たちの祭りは終わる
残念ながら、jp鯖もマストドン自体も、これから長い目で見ればこれ以上流行ることはないと思います。もっというと衰退していくかもしれません。
いままでの文章が過去形だったの気づいた?そういうことだよ。
その要因はいろいろな方がいろいろ語っていて、どれも正しいはずです。
私も指摘したい点があります(要因の核心ではない)。
マストドンの掲げる理念「分散型」「反商業主義」は、利用者からしたら(現時点では)関係ないのでは?ということです。
たしかに一民間企業が集中的に管理するTwitterは凍結問題だったりプロモ多すぎだったり何かと問題も多いけれど、致命的に嫌われているわけではない。
インターネットの自由といった面ではとてもすばらしい理想を掲げたマストドンではあるけど、それ自体は一般の、プログラミングでHello World!を出せない私たちには届きそうにない*6。
もうひとつ、やっぱりみんな素性を現し始めたよね。。。というのもあります。
謎の存在が謎ではなくなり、「社会的属性」が徐々に顔を出し始めた。
でもこれは仕方ないと思います。情報は不可逆的に流出するものだし、オフ会を開いたりするのはきっと楽しい。私は全く批判するつもりもないし、私自身素性を現したい欲あるもん。JKなんだけどさ……えーと、住んでる県とか高校名とか?言っちゃいたくなるじゃん?
「われわれインターネットの人間は有象無象の幽霊のようなもの。欲を出して足を見せたらただのつまらない人間なのがばれてしまう」
以前あるネットユーザーがTwitterにこう書いていました。
幽霊のように謎めいた存在だからこそ、足を見せる=正体を現すときは、それ相応に失うものを自覚しないといけないのかもしれません。
Twitterの最初期も、4月のjp鯖のような「文化祭の前日」的な熱狂があったと聞いたことがあります。
Twitterはそのあと、全世界に拡がる盛大な文化祭を挙行しました。今も祭りのさなかでしょう。
文化祭当日を迎えないまま、私たちjp鯖の「文化祭の前日」は終わるかもしれない(あるいは終わろうとしている/すでに終わってしまった)。
▼おわりにかえて
ここまで読んでくださりありがとうございました。
この記事を読んだ方で、マストドンに登録していない方は今すぐ登録しましょう。別にjpでなくても構いません。マストドンはまだオワコンじゃないぞ。
登録したまま放置している人は、またログインしてトゥートしてください。
いろいろあってやめちゃった人も、また戻ってきてほしいな。
しょうがないとはいっても、やっぱり衰退していくのは悲しいです。
それになんだかんだ言ってマストドン自体も、いろんな事件があったり発展があったりしてなんやかんやまだまだ楽しい。
Pixivが運営するマストドン「Pawoo」にTwitterや新浪微博から大量の移住者が押し寄せたことがあったように、まだ可能性はあるはず。
私としては、mstdn.jpというサイトの「枠組み」が消えても、そこにいたみなさんとのつながりがあればそれで十分です。
でもやっぱりマストドンやjp鯖それ自体も私は好きです。
「マストドンとは?」「インターネットのつながりとは?」
そういう「今いるこことは?」「今やっていることとは?」を自問自答するコミュニティなんてそうめったにないし、そんなこと自明では?と目にもくれないのが普通なはずです。
でも、そんな「初歩的」だが簡単ではないことを真剣に考える人がたくさんいるのは、私はむしろとっても素敵だと思います。
まだしばらくはjp鯖、そしてマストドンで「文化祭の前日」を過ごしたい。
そう思っています。
jp鯖のない、そんな世界になってから今日という日を後悔したくない。
あんな日々にもう戻れないとしても、私は今のまま「匿名」の存在として、一人のJKとして電脳の海を今日も漂っていきます
――みんな仲良くドンするパオね🤗🙌 *7
▼参考までに。
記事と全く関係ないけど、これをヘビロテしながら書いてるうちに歌詞が文中に入り込んでしまった(探してみてね)。
かいたひと:女學生 - mstdn.jp